新年のごあいさつ

新年のごあいさつ

平成23年 新年のごあいさつ

新年あけましておめでとうございます。本年も「渡辺のりゆき」をよろしくお願いします。

ご存知のように私は、落語が大好きでとりわけ立川談志師匠をよく聴きます。その噺のまくら(前段)に天才漫画家、手塚治虫の話題になります。その代表作はなんといっても、「火の鳥」。その「未来編」では、人類が自らの支配を電子頭脳に委ねる場面があります。私たちの子孫は、先人が創造した電子頭脳に支配されてしまうストーリー。ところが今、手塚治虫があの1967年に鳴らした警笛は現実のものになっているように思えます。

行政におけるコンピューターの普及もほぼ済み効率的にはいい面もありますが、昨年の百歳以上のお年寄りが日本中で行方不明になっていた問題も、コンピューターに入力さえすれば管理できていたと錯覚したのか。お役所の仕事が現場の情報より、数字やデータを重要視した結果であります。

バーコードで管理されている食品には、賞味期限・消費期限が明記され、店頭におかれています。おかげでわれわれ消費者はわかりやすく、買いやすくなりましたが、腐っていないか、まだ食べられるのか、という感覚は確実に鈍ってきています。

もはや、当たり前のように使うカーナビや、GPS搭載のモバイル機器ほか。見知らぬ土地を走るのに、悩むことなく次は右、次は左だと便利です。しかし、なんでも教えてもらうことに慣れてしまったわれわれやまたそれを統括する政治経済界のリーダーまでもが、先の見えない未来どころが、現在の状況判断へのハンドルも切れているのか心配です。

昨年(2010年)の暮れのワイドショーを観ていると、宮城県の食品スーパー「主婦の店・さいち」の特集がありました。小さいけれども元気なお店。をモットーに一店舗だけで手作りの「おはぎ」を1日平均5,000個、土日には遠くからの買い物客による10,000個以上も売れるそうです。売上の5割を占める惣菜には、レシピつまりマニュアルはなく、口伝えで教えていく方針です。「さいち」の佐藤啓二社長・澄子専務(ともに75歳の夫婦)は自ら考える力をつけ、お互いにつながって生きる「心の経営」が信条。惣菜で立ち上げた奥さまの澄子専務は「お惣菜は心で作るもの」と言い切ります。惣菜つくりのノウハウは、すべて自分の店で考えたもので、専門家の教えは受けません。「さいち」の社員は聞く耳を持っているが、それをお客様の声を聞く耳。先生や専門家ありきでなく、まず自分たちで考える。そうすると、自分で作ったものに愛情がわいてくる、、、。家族への愛情と商品への愛情は同じだという。
この特集で感じたことは、まさしくわれわれ地方議会や行政運営のあり方、そして商売としての考え方などに大変参考になりました。なんでも他市が実施しているから行う条例の制定や総合計画ほか振興施策など専門家やコンサルタント任せの行政運営になりがちであります。このままだと情報洪水の中にのまれてしまわないか、時間に追われ、人間本来の「豊かな心やふるさとを思う心」などを失わないか、憂慮されます。
私は、市議会議員を務めると同時に、機械工具の卸業をはじめ、学習塾の経営などさまざまな仕事をさせていただいています。よく、「二束のわらじ」を履いて云々という話も聞きますが、現代の厳しい時代ではそれくらいの体力や世間の流れを感じる柔軟性がないと、ものごとを判断する力がついていけない気がします。

昨年における政治の世界では政権交代はしたものの、そのあたりの思いや理念などを整理しないで、とりあえず政権奪取というところが、見事に露呈したようです。
国政も市政もそうですが、落語の世界ではないが、「もうこの辺でいいよ!」というような発想もあっていい気がします。身の丈にあった行政サービスやインフラ整備など、なんでもかんでも行政が過剰なサービスをするのではなく、自分たちでできることは自分たちで行い、また違ったサービスのあり方などを検討する時代であると思います。
また、厳しい予算でありながら行政が無理に直接おこなうのではなく、民間に委託をするなど、コンピュータ化したデータの都合や前例主義にとらわれず、どっかの映画のセリフではありませんが、「事件は現場でおきているんだ!」をモットーに市民からの本当の要望を一個、一個大事に丁寧にこたえる政治が今、もとめられている気がします。

私は前から「マニフェスト」ってのは、好きではなかったです。今こんな政権になったから、急に言い出したのではなく、知り合いの仲間は承知してくれていますが、う~んと前から申し上げていました。あれは「マネ(・・)フェスト(笑い)」だなんて冗談を言っていたくらいです。ひとりの候補者が言い出すと、みんなマネして我も我もとなってしまいました。あれは、当然考えぬかれて発言をされたり、約束した方もいられると思いますが、わかりやすく言えば、レストランのメニューでたくさん並べて置きながら、注文すると、「まだ食材が届いていません!」「コックが足りません!」「仕入れをするお金がありません!」などという言い訳をしているのと似ています。政治は国民に安請け合いするのではなく、安心・安全をどのように守るか。そして有事にどのような対応するかが、大事であると思います。

システム化された高度な社会を維持しつつ、そこに生きとし生けるもの、生命の尊厳をいかに守るか、、、目先の利益にとらわれ、一人の人間として誤った判断をしていないか?長い伝統や歴史のなかの一時期のひとりとして、未来に自分の業(なりわい)を通じて何ができるだろうか。皆さんとともに同志として真剣に考える時代がいよいよ来ている気がします。政治や景気が悪い。世の中が悪い。ばかりではなく、何が大切か。を基準にまさに「選択と集中」が必要です。とにかく、冷静かつ大胆に、「豊かな発想で市政改革」に努めてがんばりますので引き続き、ご支援の程よろしくおねがいします。

本年も皆さまにとっていい年になりますよう心からご祈念申し上げ、あいさつといたします。

伊勢原市議会議員 渡辺のりゆき
参考資料:新経営サービス(バイマンスリーより)